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今回の文献はカナダからのものです。米国では2017年にピーナツアレルギー発症を防ぐためにピーナツ含有食物の早期摂取を呼びかける声明(Addendum guidelines)が発表されました。このガイドラインの前後でカナダのモントリオール小児病院救急外来にピーナツアレルギーによるアナフィラキシーで受診した患者数に変化があったかどうかを調べたものです。その結果は2歳以下の児3-17歳に分けて観察しました。その結果2歳以下ではガイドライン発表の後、ピーナツアレルギーによるアナフィラキシーの児が減少しましたが、3歳以上では変化がなかったと報告しています。
早期摂取とはいつ頃なのでしょうか。またどんな児に与えれば良いのでしょうか。但しピーナツは3歳頃まではピーナツそのものを与えるのは窒息の危険のために与えることは出来ません。ではどのようにすれば日本でピーナツアレルギーを予防できるのでしょうか。ここをクリックすればこの論文の解説とどのようにしてピーナツを与えるかについての方法の提案を記載しています。
アナフィラキシーを起こしたときに最初に投与すべき薬剤はアドレナリンです。日本ではエピペンRが一般的には処方されています。しかしエピペンは注射ですので、本人は勿論、本人に代わって注射する保護者・学校関係者にとっても大変勇気がいりますし、抵抗感があります。そのために注射するのをためらって投与が遅れることがあります。この問題を解決するために点鼻による投与薬が開発されています。日本でも治験が行われています。この論文は健康な成人にエピペンと同様に効果があるというものです。
日本ではエコチルという大規模な疫学調査が行われています。この調査を元にして大量の論文が出されています。この論文もその一つです。この論文では胎児期または乳児期初期に犬または猫に接触すると3歳までに食物アレルギーのリスクが低下すると報告しています。しかし、ハムスターを飼育すると逆にナッツアレルギーの発生リスクを高める可能性があるとしています。その理由はハムスターの餌がナッツであるためにそのナッツが家塵として存在して、皮膚から感作して、ナッツアレルギーを引き起こしている可能性を指摘しています。日本でもナッツアレルギーが急増しています。私の医院の患者でも最近多数のナッツアレルギーの患者さんが来院されています。その大部分が家族の誰かがナッツを家で食べています。アルコールのつまみとして、また近年パンにナッツが入っています。ここで重要なことはナッツアレルギーになる患者さんの大部分において患者本人は日常的にはナッツを食べていません。
最近小児の食物タンパク質誘発性胃腸炎症候群が増加していますが、その原因は離乳食が早期に与えられるようになったのが原因ではないかと言われています。しかし成人の場合はその原因は明確ではなく、また報告自体が少ないです。しかし実際には医療機関に行かないケースが多いのかもしれません。食物タンパク質誘発性腸炎症候群がアレルギーか否かもはっきりしません。実際そのための検査も確立されていません。先ずはどのような疾患であるのかを示した貴重な論文です。なお食物タンパク質誘発性胃腸炎症候群は以前消化管アレルギーといわれていたものです。普通のアレルギーと違って、蕁麻疹等の皮膚症状、咳などの呼吸器症状はありません。消化管のみに症状が出ます。また普通のアレルギー疾患の治療に使用される抗ヒスタミン薬は無効です。また重症のアレルギーに使用されるアドレナリンも無効です。ステロイドが軽度効果あるかもと言われていますが、明確ではありません。結局、吐き気止めと輸液のみが効果があります。
乳児での極少量食品早期導入: 無作為化試験
食物アレルギーの原因は、最初にアトピー性皮膚炎(湿疹)が発症し、続いて食物アレルギーになります。この研究もアトピー性皮膚炎がすでに発症した患者を対象にしています。早期から食物を与えて食物アレルギーを予防する試みは多数行われてきましたが、悉(ことごと)く失敗しています。唯一日本で行われた夏目による研究があります。それは卵アレルギーを生後6ヶ月より少量投与して1歳の時点で予防を確認したものです。Nishimura等による今回の研究は生後3-4ヶ月よりごく少量の食物を与えて食物アレルギーを予防する研究です。この研究の特徴の一つは、開業医のみのグループでこの研究を行ったことです。一般にこのような研究は大学病院・大病院で行われるのは普通です。その意味でも画期的な研究です
LEAP研究は赤ちゃんのピーナツアレルギーを予防するには、それまで行われていたピーナツを避けるのではなく、ピーナツを早期から摂取することによって、ピーナツアレルギーを予防できるというエポックメイキング(画期的)な研究報告です。それまでは経口摂取すると感作されて、食物アレルギーになると信じられていました。このLEAP研究の結果は画期的ですか、そのメカニズムはよく解っていません。この論文はマウスを使用してそのメカニズムを解明しようとした研究です。
牛乳アレルギーは食物アレルギーの中で治療に苦慮する食物の一つです。牛乳アレルギーの治療としてbaked milkを用いての治療についての総説は同じグループの人たちによって既に総説で紹介されています(その翻訳をこのホームページに掲載しています)。これも同じグループによってbaked milkによる治療によって生の牛乳を飲める量が増加したとの報告があります。今回は二重盲検試験によってbaked milkを摂取できる量が増加したという論文です。
ダニは気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎の原因の発症・悪化因子であることは既知の事実です。この論文は食物アレルギーの悪化・誘発因子にもなるというものです。母親の母乳に含まれているダニが児の腸管に作用して、腸の透過性を高めるために、抗原の吸収が高まるとのことです。ダニは皮膚に対しても同様にプロテアーゼの作用によって皮膚のバリアが破壊されて炎症を起こしてアトピー性皮膚炎の悪化を招きます。ダニの除去はアレルギー発症を予防できる可能性があります。
乳幼児のの食物アレルギーのある児の大部分は赤ちゃんの時代に湿疹があります。この文献はどの月齢に湿疹があると、3歳時に食物アレルギーになるのかを検討した文献です。最近は湿疹が食物アレルギーの原因であることがほぼ確率されてきました。湿疹を予防・治療することによって食物アレルギーを予防出来るのではないかと、精力的に研究が進められています。数年経てば明確になると思われます。現在の段階では、湿疹が赤ちゃんにあれば、直ちに治療することが食物アレルギー予防に、さらにその後の湿疹(アトピー性皮膚炎)の予防に、そして喘息をもある程度予防出来るのではないかと考えられるようになってきました。
食物アレルギーの中で最も難治の一つが牛乳アレルギーです。この牛乳アレルギーを予防する方法の論文が日本から出ました。生後1-2ヶ月の間から少なくとも10mlの人工乳を毎日摂取することにより、牛乳アレルギーが予防できるという画期的な発表です。重要な論文ですので全訳しました。
食物アレルギーの治療において最も困難に直面するのは牛乳アレルギーです。たの食品に較べて耐性獲得が難しい症例が多数存在し、アナフィラキシーが最も多い食物の一つです。牛乳アレルギーを治療する困難さは世界共通のようです。日本ではほとんど行われていませんが、外国ではベイクッドミルクによる治療が行われています。この文献はその総説です。私にとっては貴重な文献ですので、これも全訳しました。詳しく記載されており、大変役立ちます。今後日本でもベイクッドミルクによる治療が行われていくものと思われます。ベイクッドミルクによる治療が上手くいくことが多いといっても、やはりアナフィラキシーを起こす例が報告されており、必ず専門医と相談しながら進めてください。
今回紹介する文献は近年の食物アレルギー分野において最も重要な文献の一つです。しかもこの文献は日本人によって書かれています。前回紹介したピーナツの文献と少しよく似ていますが、最も異なるのは対象の年齢です。アトピー性皮膚炎(湿疹)のある児に生後6ヶ月より卵を与えています。与えなかった児と生後12ヶ月で比較したところ明瞭に6ヶ月より与えた児の方が卵アレルギーにならなかったのです。ここでもう一つ重要なことはアトピー性皮膚炎の児で湿疹の治療を十分にしなかった方がおられました。この患児は卵アレルギーを発症してしまったのです。いかに食物アレルギーを治療するとき、アトピー性皮膚炎(湿疹)の治療が重要であるかを示しています。この重要な報告を基に日本小児アレルギー学会では「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表しています。重要な文献ですので全文の翻訳を掲載しています。この文献があるからと言って6ヶ月児にいきなり大量の卵を決して与えないよう注意してください。必ず専門医と相談しながら行ってください。
食物アレルギーの治療は早期に開始した方が、却って安全で早く、しかもより治療効果があるという文献です。
小さい赤ちゃん(5-6ヶ月)を検査したところ陽性にでた食べ物を早期に与えるために食物負荷試験を行おうとすると、心配されてもっと大きく成長してからと言われる方が多くおられます。しかし最近の文献のほぼ全てが早期(正常児と同じ時期)の離乳食開始とともに、検査でアレルギーの可能性があると判断された食物も早い目の摂取が勧められています。
牛乳アレルギーの治療に乳酸菌を加えると、牛乳アレルギーが治りやすく、牛乳アレルギー以外の症状も発現しにくくなるという文献です。私はこの治療に大変関心がありますので、要旨だけではなく、全訳して掲載しました。
珍しくイランからの報告です。小麦の経口免疫療法は牛乳に較べると成功率は比較的良好です。しかし重症患者・特異的IgE値または特異的ω-グリアジン値が極端に高い場合は苦慮することも多いです。この文献のように極めて少量から投与する方法が成功率が却って高いように思えます。特に乳児期を過ぎた患者さんには適用と思われます。
食物アレルギー・湿疹と気管支喘息との関係は以前より言われていました。姫路での小学生新入生アレルギー調査でも食物アレルギー・湿疹(アトピー性皮膚炎)がある児は気管支喘息が有意に多いことが判明しています。この論文はオーストラリアからのですが、既に食物アレルギーが治(なお)っていても喘息発症の危険が高いとの報告です。この論文だけでみると心配ばかりですが、実は姫路市の小児喘息の患者さんは減少しています。先日食物アレルギーの大家である海老澤元宏先生が姫路で講演されたときに相模原市でも小児の喘息患者さんが減少しているとのことでした。何故なのでしょうか。考えられる理由の一つが湿疹(アトピー性皮膚炎)が減少していることがあげられます。姫路市では小学校新入生の湿疹のある児は平成7年(1995年)の時と比べて約半数まで減少しています。また最近は出来るだけ早期に湿疹の治療・予防が行われるようになっています。このような湿疹の改善が喘息児の減少に繋がっている可能性が十分あります。私も含めてさらにアレルギー患者が減少するように努力したいと思います。
この論文はアトピー性皮膚炎のサイトでも紹介しましたが、食物アレルギーとも関係がありますのでここでも紹介します。
ヨーグルトは健康に良いと以前から言われています。アレルギー疾患に関する論文も多くあります。 この論文は乳児期のヨーグルト摂取習慣が5歳時のアトピー性皮膚炎、食物抗原感作の予防に効果があるという論文です。
Shoda T Yogurt consumption in infancy is inversely associated with atopic
dermatitis and food sensitization at 5 years of age: A hospital-based birth
cohort study. J Dermatol Sci. 2017 May;86(2):90-96.
ゴマアレルギーは血液で調べるとかなりの患者さんが陽性に出ます。しかしその多くは数個のゴマを食べても大丈夫のようです。しかしゴマダレのように大量に含まれている食品には反応することが多いです。実際重篤な症状を起こした例が学校現場から報告されています。EU、米国、オーストラリア、ニュージランドでは食品にゴマの表示が義務づけられているこがこの論文に記載されています。しかし日本では推奨のみです。ゴマの負荷試験に関する論文は少なく、日本語の論文では見つかりませんでした。海外の論文でも多くはありません。この論文は数少ない論文の一つです。私にとっては大変役立つ論文ですし、患者さんにとっても参考になると思います。
ピーナツアレルギーは比較的多いアレルギーです。最近の文献でピーナツアレルギーとキウイアレルギーと関連していることが報告されています。。
食物アレルギーは皮膚から 今最も重要なことです。食物アレルギーの原因が皮膚の湿疹によることがほぼ確実になりました。以前は皮膚の湿疹は食物によると言われていました。それが全く逆になったのです。
加水分解乳が一時アレルギー予防のためによく用いられていました。しかし最近この加水分解乳の論文を多数集めて解析(メタアナライシス・システミックレヴュー)したところ、あまり効果がないことが判明しました。これを受けて日本の食物アレルギーガイドラインでは既に、アレルギーの予防のための加水分解乳を勧めていません。
海外旅行時の機内食は食物アレルギーをもっている方にとっては重要な問題です。2018年3月8日に全日空の方から講義を受けました。7品目アレルゲン(小麦、蕎麦、乳製品、卵、落花生、えび、かに)対応食、27品目アレルゲン(小麦、蕎麦、乳製品、卵、落花生、えび、かに、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、ごま、カシューナッツ)対応食を幼児食と大人用で準備されているそうです。毎年4500人からリクエストがあるそうです。
エピペンの機内持ち込みについても教えて頂きました。原則的に機内持ち込みは可能ですが、空港での保安検査をスムースに行うためには医師の証明書または処方箋がある方が良いとのことでした。機内に医師が居れば使用できる薬品のリストが公開されています。
離乳食で卵とピーナツを早期に与える方が卵アレルギー、ピーナツアレルギーを予防できるかもしれないというシステマティックレヴィユとメタアナライシスの論文です 2018/03/07
経口免疫療法のメカニズムの総説です。本来は難解ですが、比較的解りやすく解説されています。2018/03/07
Kulis MD Immune mechanisms of oral immunotherapy JACI 2018 141 491-8
経口免
食物アレルギーの文献ではありませんが、妊娠中・授乳中の母親の食事とお子さんのアレルギー疾患との関係についてのレヴィユ-です。
母親がピーナツを摂取しながらの母乳と児の早期(1歳まで)ピーナツ摂取がピーナツ感作リスクを下げる
食物アレルギーのある人はビタミンDのサプリメントとしての摂取が、食物アレルギーを改善する可能性がある
1歳時のアレルギー感作のないアトピー性皮膚炎は3歳時の喘息のリスクと関連しない。1歳時のアレルギー感作のないアトピー性皮膚炎は3歳時の喘息のリスクと関連しない。しかし1歳時のアレルギー感作のあるアトピー性皮膚炎は3歳時の喘息と食物アレルギーのリスクを予測できる。
Tran MM Predicting the atopic march Results from the Canadian Healthy Infant Longitudinal Development Study JACI 2018 141 601-7.
人工乳を与える時期が遅いと牛乳アレルギーのリスクが高くなる という日本人が執筆した英語の論文を紹介します。
Onizawa Y The association of the delayed introduction of Cows milk with IgE-mediated cows milk allergies JACIP 2016 4 481-490.
離乳食とアレルギー 最近この問題がクローズアップされてきています。オーストラリアのガイドラインでの離乳食とアレルギーについて紹介します。
2018年2月に撮影しました
マックスバリュでアレルギー対応食品を売っているのをご存知ですか。やさしごはんシリーズで卵。牛乳、小麦、エビ、カニ、ピーナツ、そばの7品目が含まれていません。隣の城の西店に行って買ってみました。「トマトたっぷりブラウン風ソース」「スパゲッティタイプ」「ホワイトソース」の3つを買って試食してみました。スパゲッティタイプにホワイトソースをかけて食べました。結構良い味でした。トマトたっぷりブラウン風ソースもしっかりした味でとてもアレルギー用食品とは思えない美味しくてこれならアレルギーのお子さんと家族一緒に同じ食べ物を食べられて、お子さんが喜ばれると思います。マックバリュもよくやるなと感心しました。
牛乳アレルギーの児が牛乳を飲みやすくするミルクマジック という製品があります。少量しか飲めない人には不向きですが、100ml以上飲めるが嫌いな人には便利でです。