アトピー性皮膚炎の情報です。下記の緑の部分または絵(写真)をクリックするとさらに詳しい情報に移動します
この論文は米国人がアトピー性皮膚炎と大気汚染との関係を述べたレビュー(総論)です。この中で米国ではアトピー性皮膚炎が増加しているとの記載がありますが、日本では減少しています。姫路市の小学生新入生のアトピー性皮膚炎有症率は調査し始めた1995年頃以後減少し続け、平成27(2007)に最低の8.1%となりました。これは調査し始めた時の有症率は17.5%に比べると半分以下に減少したことになります。その後若干増加傾向にあります。なお姫路市のアレルギー調査・大気汚染については毎年医師会ホームページの「姫路市ににおける大気汚染の健康に及ぼす影響調査報告書」を見てください。アドレスは下記です。
https://www.himeji-med.or.jp/category/infection_information/asthma.html
姫路市小学生新入生の平成7(1995)年以降のアトピー性皮膚炎有症率(問診による)減少はアトピー性皮膚炎が単なる遺伝ではないことを証明しています。この論文では米国で増加していることが遺伝のみではないことを述べています。環境がいかに重要であるかを示す一つではないかと思います。大気汚染との関係についてこの論文では種々述べていますが、姫路市では一般的な大気汚染はオゾンを除いて大きな問題はありません。そのためかアトピー性皮膚炎に関しては地域差がありません。姫路市では南部の工業地帯ではその他の地域と比べて汚染度がやや高いですが、全体的には大きな問題はありません。しかし理想から言えば、もっと改善する余地があります。例えばPM2.5は低水準で推移・改善していますが、WHOでは5μg/m3以下を推奨していますが、姫路市では令和4(2022)年度は8.7μg/m3ありました。この論文では他の汚染物質についても述べていますので参考になります。
アトピー性皮膚炎皮膚炎が持続する要因は多くありますが、この研究は13年間追跡調査をして13歳まで持続する因子を調査したものです。その因子は父親の喘息とアトピー性皮膚炎高い社会的環境(地位)、眼瞼の湿疹、前頸部の皺、白色描記症、羊毛に対する不耐性、発汗時のかゆみ、皮膚感染傾向、食物不耐性、食物アレルギー、重症度です。 この調査ではアトピー性皮膚炎の罹病率は2-3歳がピークのようです。またこの2-3歳時のアトピー性皮膚炎は2/3が13歳までに寛解するようです。
保湿剤の効果については意外と質の高い文献は少ないのですが、この文献は数少ない中の一つです。アトピー性皮膚炎の患者さんで、ステロイド軟膏しか塗らない方が多く居られます。その理由は保湿剤は効果がないからだとのことです。しかし塗る方法、即ちステロイド軟膏をしっかり塗布して、完全にアトピー性皮膚炎による湿疹病変を無くしてから保湿剤を続けると明らかに、保湿剤を塗るのと塗らないとでは差があります。この文献はそのことを証明しています。
アトピー性皮膚炎の患者さんが心配することの一つに、ステロイド軟膏を目の近くに塗ると目に影響しないかと言うことです。意外とこのことに関する文献は多くはありませんが、最近日本から論文が出ました。アトピー性皮膚炎患者でステロイド軟膏を使用していると眼圧に影響するのかというものです。結果はあまり影響しなかったのですが、外国では3200gのbetamethasone dipropionate ester(商品名:リンデロン)を16ヶ月間で使用したところ緑内障が発症したとの報告、逆に4ヶ月で3200gを使用ても発症しなかったとの報告があり一定していません。しかし4ヶ月で3200gとは信じられない大量のステロイドです。いずれにしても長期に眼の付近にステロイドを使用する場合は、眼科にも受診した方が良いと論文でも記載されていました。
フィラグリン遺伝子の異常があるとフィラグリンが上皮に欠損するために皮膚の保湿能力が低下してしまいます。このために著明な乾燥皮膚となります。尋常性魚鱗癬のある欧州の家系でフィラグリン遺伝子の異常が報告されました。その後この遺伝子の異常があるとアトピー性皮膚炎の大きな病因であることが解ってきました。フィラグリン遺伝子の異常のある人では手掌の皺が多いのが特徴だそうです。この論文は日本人のフィラグリン遺伝子の異常を来す遺伝子は欧州人とは異なること、アトピー性皮膚炎の患者に多いことを報告しています。この論文には写真が掲載されています。この論文自体が無料で閲覧できるようになっていますので、興味ある人は原文で読んでください。無料ですので引用を明記して写真を引用させて頂きました。参考にしてください。大変有用な写真です。
ヨーグルトは健康に良いと以前から言われています。アレルギー疾患に関する論文も多くあります。この論文は乳児期のヨーグルト摂取習慣が5歳時のアトピー性皮膚炎、食物抗原感作の予防に効果があるという論文です。
アトピー性皮膚炎の治療は基本的にステロイド軟膏の外用(塗布)にて大部分の患者さんは改善します。しかし改善した後多くの患者さんは外用を中止してしまうためにまた再発してしまいます。再発してからまた外用する方法をリアクティブ療法と言います。この方法では常に湿疹がある状態になります。この論文は湿疹が改善した後、皮膚に全く湿疹が消失しても一週間に2回予防のためにステロイド軟膏または局所カルシニューリン抑制剤(タクロリムス、商品名プロトピック))を塗布する方法です。この方法をプロアクティブ療法と呼んでいます。大変効果があるようです。ただこの論文では長期の副作用は解らないとしていますが、この治療が始まってから10年近くなりますので副作用の問題はありません。
乳児期のの湿疹(アトピー性皮膚炎)が3歳時の食物アレルギーと関連するという日本人の論文です。乳児期の湿疹はできるだけ早期に治療する必要があります。
現在アトピー性皮膚炎の治療はステロイド軟膏を中心にした外用療法です。しかし最近インターロイキンIL-4/IL-13の受容体に対する抗体による治療薬dupilumab(商品名:デュピクセント)が日本でも発売されました。パラダイムシフトとまでも呼ばれる画期的な薬です。この薬は注射で皮下注です。治療開始から数日後より改善してきます。副作用は注射部位の発赤、結膜炎があります。また報告はありませんが、アナフィラキシーの可能性がありますが、総じて安全な薬のようです。米国でもこの画期的な薬が発売されたのに、ガイドラインにまだ記載が無いためにこの薬の位置づけのためにこの論文が書かれています。この薬の最大の欠点は薬価が高いことです。この薬の投与対象の人は最近6ヶ月以上の期間、ステロイドやタクロリムス外用剤の抗炎症外用剤を適切な治療(適切な量をしっかり塗布)しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者さんです。残念ながら小児はまだ使用できません。数年後になる予定です。成人の方は是非診察時に相談してください。